木材の呼吸とは?

木が呼吸するのは本当?
木材は呼吸をするという表現を良く見ます。塗装方法によって木の呼吸を止めるなどの使い方をされるこの言葉ですが、本当のことでしょうか?
木材は伐採される前、光を吸収して二酸化炭素と水を分解し、酸素とデンプンを作ります。これが光合成と呼ばれるいわゆる植物の呼吸です。
しかし、伐採した木に光合成をする力があるかというと答えは「ない」になります。
では木の呼吸とは一体何なのか? そのお話をしたいと思います。
樹木の重要な働き光合成の力は衰えていく

植物の重要な働き光合成ですが、人間の成長のように、植物の光合成の力にも衰えが生じます。
植物によりピークや樹齢が異なりますが、植物も根を張って育っている時は光合成の力は強いのですが、ある程度生長しきってくると、光合成の力は弱まります。そしてやがて枯れてしまいます。
家具材として使われる天然木の多くは、枯れる前の植物としての役割を終えようとしている樹木を伐採し製材されます。
木は伐採されると光合成する力を失います。呼吸が止まってしまいます。しかし、ここから木材の新たな役割がスタートします。
それが「木材の呼吸」と呼ばれるものの正体になるのですが、それを説明する前に伐採された木材がどのように家具材になるのか?をお伝えします。
伐採から家具材になるまで

木材は伐採されると運ばれ、乾燥されます。この工程で木材に含まれた水分を抜いていくことになります。
水分を吸収するどころか放出していくので当然呼吸はしていません。乾燥をしっかりとすることで反りや割れに強くなります。反りや割れは家具にとって大敵です。
だから木材の乾燥という工程はとても大事な工程です。
木材に含まれる水分量は樹種によっても違いますが重量の半分以上が水分ということも珍しくありません。
この水分を含む割合のことを含水率と言いますが含水率を乾燥によって下げていくことで木は強度も上がり、変化にも強くなります。
この水分量を乾燥により概ね15%以下まで下げると平衡含水率と呼ばれる安定した状態になります。
平衡含水率は、一定の温度と湿度の条件のもと、長時間放置しても最終的に安定する含水率のことです。
この状態になった木材は樹種によっては伐採時の重さが半分以下に下がるものも出てきて、大きさも縮んでしまいます。
しっかりと乾燥を行い、変化がなくなった状態で加工され、板や脚、柱など部位ごとに形を整えられ製材されます。
木の呼吸の正体とは?

では乾燥と木の呼吸にどんな関係があるのでしょうか? それは家具などで良く言われる「木が呼吸する」とは実際には光合成のような呼吸ではなく、木材の持つ調湿作用のことです。
木材は性質上乾燥した場所では水分を放出し、湿度を上げようとして、湿度が高い場所では水分を吸って湿度を下げようとします。この働きを調湿作用というのですが、このことを指して呼吸をしていると言っているのです。
乾燥をすることで木材は蓄えていた余分な水分を放出し、硬く、変形に強くなります。それと同時に空気中の水分を吸ったり自ら蓄えている水分を放出することで湿度のコントロールをして、より過ごしやすい空間づくりを行っているのです。いわば、天然の加湿器、除湿器のような仕事をしてくれます。
まとめ

木の呼吸というと少し大げさに聞こえるかもしれません。しかし木は植物としての役割を終えた後、素材としての役割を保ちながら活かされ続けます。
この木材の調湿作用の働きが特に強くタンニンなどを含む家具材として桐材が挙げられます。そのため桐材は引き出しの素材としてよく利用されます。
木材も人と同じで一つひとつ表情が違い、それぞれの樹種ごとに特徴も分かれます。
その特徴や表情を活かして、一つひとつ工夫されています。
当店で取り扱う天然木の家具は、職人が丁寧に仕上げた素材の良さを引き出した商品ばかりです。ぜひご覧ください。